次代の農モデル of 田舎で働きたい


研修生が農を通じて価値をつけた事例集です。

①畑が直売所
畑に植えたままの野菜を、自分で掘って、そこで買う

■「畑が直売所」いよいよ開店!

1-1.jpg 2010年7月1日、「畑が直売所」は開店しました。収穫したものを、このまま地元のスーパーなどで販売するだけでは面白味に欠ける、色々な人が集まり、元気を与えられる畑でありたい、生産から消費までつなげる農業をしたい、これらの思いから「畑が直売所」を作りました。
 来店されたお客様は、抜いてみるまでどんな大きさでどんな形か判らない人参を、どれにしようか迷いつつ、意を決し、1本抜いては、「やった~!当たりだった~!」とか、「うへぇ~!二又人参だったわ~!」と一喜一憂されていました。
1-2.jpg 畑には、お店では見かけないような規格外の野菜もたくさんあります。普通ならそれらは、加工ができればそれに回りますが、たいていは農家さんの自家消費に回るか、それでも消費しきれない大部分はそのまま畑に放置されて畑の肥やしになっているという現実があります。けれど今回、畑にはその様な野菜は一つも残りませんでした。二又の人参も、ビー球みたいなジャガイモもみんな大切に持ち帰られました。全てお金に換わったのです!「畑が直売所」の大きな意味の一つです。つまり、「もったいない野菜」が畑からなくなったのです。お客さんはこれを理解・納得され、農家もハッピーです。ややこしい表示も必要ありません。産地も気にする必要がありません。育て方も心配する必要がありません。全て目の前で起こり、完結しているからです。生産者の顔は、見えるどころかすぐそばで直接生々しい肉声まで聞けて、体温や息遣いや、更に、生き方まで垣間見えてくるのです。

■「畑が直売所」の可能性・広がりが農業を変える!

1-3.jpg「畑が直売所」には様々な可能性が見えてきました。生産側としては、いい作物を作ることは当然の事ながら、畑をきれいに保ち、気持ちよく訪れ帰ってもらうために環境を整えることも優先するようになりました。道具や資材をキチンと片付け、草をキレイに刈り、あちらこちらに花を植えるのです。畑を楽しむ居場所にしようという構想が広がりました。

 地域循環の生まれるステーションとしての機能も生まれました。お客様も含め個々の知恵を持ち寄ってくるのです。例えば、家庭の生ごみやコーヒーかすなどの「もったいない」を持ち寄り畑に戻すことで地域循環も生まれてくるのです。

 そして癒し・健康・教育の場としての機能も見えてきました。仕事帰りに、または家族や友達と汗を流して野菜を収穫し草を抜いて帰るだけでなく、ここでお茶やコーヒーを飲んで帰ります。今後はヤギを飼い、鶏を飼い、水辺を作って魚を飼い、花一杯の空間を作り、訪れた人たちやここで働く若者がホッと一息つき元気になれる場所を作れば、心の安らぎを得たり、子供の情操教育の場にもなりそうです。

②農と開発
デザイン・パッケージで価値付け

DSC06363.JPG 地域の特産品であるモズクに注目しています。地域で全国シェアの一位を誇るモズクの消費量が、収穫量を大きく下回っているとの話を聞いて正直驚きました。我が家では常備されている食材であったことと、どこのスーパーに行っても必ずといって良いほどメジャーな食べ物だと思っていたからです。しかし、実際商品の加工時に使用されるモズクはごく少量で、消費量はまったく追い付いていない事、また沖縄県内ではモズクの加工・販売が行われておらず、モズクを取ることで生計を立てている海人の人たちは加工会社から原価の引き下げを強いられ、いくら採っても生計が成り立たない事が問題になっており、その両方の問題解決の一歩として、モズクを使った新商品の開発に力をいれて活動をされているとのことでした。

 農業が抱える問題については知る機会がありましたが、漁業にもこういった「もったいない」が溢れてかえっているのだという事を知り、改めて様々な事を考えさせられました。そういった問題に向き合おうとしている人たちと販売に至ったストーリーを共有しながら仕事をしていきたいと強く感じました。

 私は、前職で大阪で企画開発メーカーのデザイン制作室に勤めていたのですが、そこでの企画内容はトレンド重視したものが中心で、流行りが過ぎてしまった商品や販売予測数が大きく外れた何十万という商品達は、行き場を失ったまま、一部は見て見ぬふりをされていました。そういった物の流れを見ている中で「ひとつひとつの商品を大事にするべきではないか、トレンドに振り回されるだけでなく、いいものをもっと真剣に作っていくべきなのではないか」と強く感じるようになりました。

DSC06914.JPG 実際、手のひらサイズのパッケージ一つでも、制作を外部に依頼するとデザイン料だけで大型TVが買えてしまう様な初期費用がかかります。さらにデータ完成までの工程は実にシンプルなもので、打ち合わせ回数は1回、修正は2回までが原則で、それ以降は追加の料金がどんどんプラスされていく…というように、個人で商品を販売していこうとしている人たちにはとても大きな負担となってしまいます。そういった方の力になれればと思っています。

しかし、最終的にパッケージなどの制作物はお客さんの目を留めるための、きっかけに過ぎません。商品を販売して自立を図るためには、競合品や売れているものの見せ方や味、使用している材料や素材、その商品を購入したお客様からの評価(口コミ)などをしっかりと研究し、商品づくりに取り組むことが何より大切であると思います。
 元気な漁村のもったいないを使った商品づくりを、力を合わせて成功させたいです。

③第6次産業化
地域財発掘と、地域流通づくり

 まったなしの日本の農業、そして山口県を盛り上げるために、自分にできることはないか。そうもがく私に、山口県で第6次産業を実行するための「農を軸とした第6次産業in山口事業協同組合」設立のチャンスが巡ってきました。
 日本の食料自給率40%。地元の新鮮な農作物はこれからもっと必要とされ、山口県は優位に立てると確信します。どう第6次産業を推進するのがベストかを考えるため、改めて情報を集めると、いろんな可能性が見えてきました。

■よそ者の視点でわくわくすること

mikanjuice.gif 私の研修地である、瀬戸内海に浮かぶ周防大島では冬みかんが例年、約3トンも収穫できます。酸味があって甘酸っぱいみかんを使ったジャムやジュースの商品化も進めています。太陽がさんさんと降り注ぎ、かんきつ系の果物に適した気候の大島では夏ミカンやレモンも育ち、さらに田んぼも借りて米、にんにく、たまねぎも作り始めています。夏ミカンの皮を使って床を磨くためのワックスを作れないか?というヒントをもらい、調べてみるとミカンをまるごと煮た茹で汁をワックスにしているという情報を手に入れ、早速自宅でミカンの皮を水をはった鍋に入れてみました。一晩つけただけでも、ミカンの香りが出て、色も黄色っぽくなっています。

occhapa.gif 宇部市にある「森の駅・くすのき」では、農薬を使わずに育てた日本茶を100キロ収穫、一般の方にもお届けできるようになりました。堆肥は、県内牧場の牛フンから作ったもので、地域内で循環しています。さらにくすのきは来年ブルーベリーの木・1850本が植えられてから3年目の収穫期を迎え、貴重な国産ブルーベリー販売、観光農園もできます。パソコンにばかり向かって目が疲れたら、広大な敷地とアントシアニンたっぷりのブルーベリーで心も体もリフレッシュしませんか?

 夏ミカンで有名な萩では、夏ミカンの花を活用できないか?と実験を進め、夏ミカンの花を使ったハーブウォーターの販売が実現しそうです。夏ミカンは花と実が同居する不思議な農作物。5月の花が咲く時期に萩まで来ないと楽しめない香りを全国に届けられます。夏ミカンの香りのファンの方に萩まで足を運んでいただいて「ハーブウォーターを作ろう!」というイベントを企画し、直接感想や声を聞いて、またそれを商品やイベントに活かすこともできます。

■第6次産業で食べていけるように

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 これらと全国のつながり、知恵、情報を活用すればいろんな展開ができそうだとわくわくしています。たくさんの壁にぶち当たると思いますが、当たっても当たってもあきらめないでチャレンジし続け、第6次産業に関わる人たちが楽しく、そして事業として続けることを目指します。
 農を軸に、社会を作りなおしていくのは、国ではなく、現場を担う私たち自身です。自分たちができることは自分たちでやる。そうしないといけない時だと、実践あるのみです。やるぞ!


④観光農園の新しい形 
合い言葉は「自立」 お菓子づくり研修ツアー

 ホームレスの仕事作りを目指してきた北海道・赤平市のイチゴ園「しーわん」モデル。ここは単なる観光農園ではありません。成長したイチゴを、まず、苺狩り、それを喫茶店でスイーツにします。ひとりひとりのお客さんが生産ー加工―消費者までを体験する第6次産業モデルです。

■研修内容

4-1.jpg①赤平のイチゴ園で、食べられそうな量の苺を摘み取る
②摘み取った苺をNPOが運営する喫茶店(研修所)へ持っていく
③研修所で和菓子・洋菓子作りの講師の方々に指導してもらい、自分達で摘んできた苺を使ってお菓子作りをする
④作ったお菓子を試食。食べきれなかったお菓子はお土産に買っていただく。

4-2.jpg 単なる観光農園ではなく、お菓子作りができる研修施設も整えています。加工する前の工程である生産、そして洋菓子・和菓子作りで起業しようとする方が先生役になって、将来、ケーキ屋さんで自立を目指す為の研修です。お菓子作りは興味があるけど、どうやってつくるの?デコレーションのコツは?材料はどこから?自立って出来るの??などなど、さまざまな疑問や不安を抱えて一歩前へ踏み出せない方はいっぱいいます。そんな人達を後押しする為に、専門技術を持っているけど起業はまだ、という講師陣が皆さんに指導して起業を目指すのがこのお菓子つくり研修ツアーです。お客さんは、これから自立しようと言うケーキ屋さん候補を応援!更に、自立を目指してイチゴを育ててきた人たちも応援!地域が、みんなの自立を応援していく、そんな循環を作るモデルです。

⑤コミュニティ・セルフビルド
自分たちの必要は、地域で作る

selfbuild.gif 荒れ果てたお茶園の一角に自分たち+その道の地域の専門職のアドバイザーの方とともに、建物を建てる研修をしています。柱は古民家の柱を再利用し、壁は土壁、そして屋根は茅葺を葺きます。この茅葺ですが、みなさんご存知のとおり、茅葺屋根を作れる人がどんどんいなくなっています。
 しかし幸運な事に今までの活動を通して知り合った方から茅葺職人の方を紹介していただき、茅葺屋根のアドバイスをしていただけることになりました。今はその準備に取り掛かっています。ido.jpg

 準備をしていて感じた事ですが、「日本の伝統技術を使うという事は身の回りのモノを使うということ」を実感しました。そんなの当たり前ですが、いつのまにか当たり前のことが当たり前に感じられない生活をしていたんですね…。
 例えば、茅葺を葺くためには、屋根の骨組みとして、竹を大量に使います。その大量の竹を使うために竹やぶがどんどん整備されていっています。今までは奥が見渡せない暗い「竹やぶ」だったものが、今では光が入り、奥が見渡せる「竹林」になっています。

wakamono1.gif また今回、屋根材に使う茅は、山口県でも有名な秋吉台という、日本最大級の石灰岩大地のものを使用することを予定しています。ひと昔前だと、あちこちに生えていたものを使っていたので、茅葺をするごとに、茅を刈っていました。畦や川辺がそのたびにきれいになっていたんだろうなぁと想像しています。
 今は、珍しさからや、昔懐かしさからか茅葺屋根や土壁が見直されている面もあるかもしれません。
 僕たちはこの先どんなことになっても、自分たちで住むところが確保できるようにします。そのためには身の回りのものを使い、環境にも優しい、先人の知恵と技術を残していきたいと思います。どんどん廃れていっていますが、まだギリギリ技術を持っている人がいる今がラストチャンス!これはその僕らの挑戦です。